マレーシア・タイ海外視察研修会レポート
期 間:2024年7月2日~7日
参加者:13名
(特別寄稿 中川ゴム(株) 社長 中川 洋平)
「次世代経営者の会」主催の海外視察研修会に参加しました。当会の視察研修は国内企業の視察が通例ですが、今回は2014年のアメリカ西海岸視察以来10年ぶりの海外研修として「マレーシア、タイ」両国を4泊6日で訪問しました。
7月2日 早朝の関西国際空港を出発し、7時間程でマレーシアのクアラルンプールに到着。やはり現地は非常に蒸し暑く、曇天もあり昨今の梅雨真っただ中の日本を思い起こさせる気候でした。1時間ほどバスに揺られ、この日と翌日を過ごすホテルに到着。この日の夕食は、「大きな海老の焼きそば」で有名な中華海鮮料理店で参加者との懇親を深めました。
「Restoran Green View」
円卓での海鮮料理
7月3日 午前より当組合員でもある「岡安ゴム株式会社」様のマレーシア子会社「OKAYASU RUBBER (MALAYSIA) SDN BHD」社へ訪問。同社は旧社屋から近年移転されており、新しい立派な社屋を構えられていました。広大な工場敷地には大型プレス、押出成形機が並ぶ光景は圧巻で、中には岡安会長がかつて自ら考案・設計された器具や、数十年前からの機械が現役で稼働すると同時に、最新の計測機器や自動打ち抜き機等の機械が数多く並んでいました。また、設立当初より長年勤務されている現地社員の方も数多く、長年にわたり好調な業績を維持されている様子が伺え、同社の歴史の長さと現在の勢いが感じられました。
「OKAYASU RUBBER (MALAYSIA) SDN BHD」社前にて
プレゼン風景
大型プレス機
丁寧にご説明いただきます
数多くの成形機が並ぶ姿は圧巻
昼食に、私自身初めて口にした美味しいマレーシアの地元郷土料理を堪能した後、午後からは、「株式会社ニチリン」と「サンライズ工業株式会社」のマレーシア合弁会社である「SUNCHIRIN INDUSTRIES (MALAYSIA) BERHAD」社へ向かいました。同社は金属チューブ加工やホース製造をメイン事業とする会社です。第一工場においては、金属チューブカットや金属プレス加工。第二工場においては、金属チューブの「曲げ加工」が主に行われており、特に第二工場の直管曲げ加工の工程が印象的でした。ロボットアームを駆使した最先端の設備と、熟練職人による卓越した技術により製造されており、3Dプリンターを駆使した治具など普段馴染みのない金属加工の製造現場ならではの(金属加工の大きな音も!)光景が広がっていました。
「SUNCHIRIN INDUSTRIES (MALAYSIA) BERHAD」社前にて
この日の夜は、新鮮な貝の鍋料理など新鮮な魚介類を主とするシーフードレストランでお腹を満たし、ホテルにて就寝。
「South Sea Seafood」にて夕食を
7月4日 この日はマレーシアからタイへ向かうべくとても早起きで皆様眠たそうでした。ホテルでチェックアウトを済ませ早々に出発。クアラルンプールを9時に飛行機で出発し、10時過ぎにはタイのバンコクに到着。マレーシア同様蒸し暑さは感じられましたが、天候に恵まれたため直射日光は強いものの比較的過ごしやすく心地よい気候です。
昼食は中華レストランにて飲茶バイキングをいただいた後、「株式会社イノアックコーポレーション」のアジア製造拠点の一つである「ASIAN INOAC CO., LTD.」社を訪問。同社はウレタンフォームや樹脂製品を主に製造し、自動車用部品、内装から普段馴染みのある生活産業用品まで幅広い製品を取り扱っています。特にウレタンフォームの長さ60mにも及ぶ製造設備に目を引かれ、他の一般的なゴム製品とは異なるウレタンの発泡工程や技術を垣間見ることができました。また、材料の端材を集積し製品として再利用するなど、素材利用の効率化を図られていることや、大きな製造設備の傍ら、細やかな2次加工を行っている職人が同居している様子が印象に残っています。
「ASIAN INOAC CO., LTD.」ロビーにて
WELCOME ボード
この日の夜はタイの肉鍋料理で舌鼓を打った後、満腹でバンコクのホテルにて就寝。
肉鍋料理店「Coca」
ボリューム満点
7月5日 ホテルにて早々に朝食を済ませた後、当組合員である「福井化成株式会社」様のタイにおける製造子会社「FUKUI KASEI (THAILAND) CO.,LTD.」社へ。同社は主に有名メーカーの座席シートやエアコン用ホース、燃料用タンク等、各業界において非常に重要な製品を製造されています。長年の経験に基づいた成形手法が随所にみられ、特にホースやタンクのブロー成形機が個人的には初見であったためとても鮮明に記憶に残っています。ロボットアームと熟年職人の手作業を駆使した正にハイブリッドな工場との印象です。従業員も一つ一つの工程を丁寧に黙々と集中を切らさずに作業を進められており、同国の勤勉な国民性と同社の社員教育が行き届いた様子が伺えました。昼食は同社の広大な食堂にてガパオライスをいただき午後に向けてお腹を満たします。
「FUKUI KASEI (THAILAND) CO.,LTD.」メインゲート前にて
座席シートの成形工程
ひとつひとつ丁寧に作業中
広大な食堂
美味しいガパオライス
午後からは、「N.C.R. RUBBER INDUSTRIES CO.,LTD.」社へ。同社は工業用汎用ホースの製造を主とするホースメーカーです。非常に広大な土地と建屋には60mマンドレル成形の現場が鎮座し、その他様々な製造設備が並ぶ傍ら黙々と職員がホース製造に取り組んでいます。同社は材料の配合から行っているということを強みとし、小口径から大型のものまで用途問わず多種多様なホースが製造されていました。何より全てのスケールが大きく、敷地や数多の設備それぞれの大きさと数に圧倒されました。ここではおやつとしてドーナツとコーラをいただき小休憩です。
「N.C.R. RUBBER INDUSTRIES CO.,LTD.」前にて
その後、シーサイドのレストランにて沈みゆく夕日を見ながら、私自身大好きなトムヤムクンなどの本場タイ料理を堪能し、ホテルに帰り就寝。
「Rub Lom Chom Koh」
夕日を見ながらの楽しい食事を
最終日の6日は、お待ちかねアユタヤ観光です。昼食は中華料理をいただいた後、かつてのタイ王国の広大な宮殿や特大スケールの仏像、戦争時に切り落とされた「首のない石像」で有名なアユタヤ遺跡を直射日光が容赦なく照りつける猛暑の中見学しました。非常厳しい日差しの中で短い時間ながらも、タイ王政の盛衰を体感することができました。そしてこの夜、惜しまれながらも帰路の途へ。
灼熱!の中見学
強すぎる日差しを避けるお二人
巨大な仏像
有名な首のない仏像
今回の海外視察は、曇天やスコールなどの天候変化はあったものの、概ね天候良好で心地よく過ごすことができました。晴天時の日差しが強さやスコールなど東南アジア特有の気候をリアルに体感できました。訪問先の製造現場も酷暑の中、風通しや空調に工夫を凝らし快適な職場環境を実現されていました。また、マレーシアとタイの人々は共に皆とても温厚であり親切、そして朗らかで真面目です。各訪問先では黙々と真剣に業務に取り組まれていました。
そして、「異なる文化や風習、言語の壁を超え仕事を創出する」ことを私自身現地で体感することができました。短い期間ながらも日本の文化や慣習から離れ、今一度自分の置かれている立場を俯瞰し見直す良い機会となりました。仕事へ取り組む姿勢、更には自分の生き方を再考する何物にも変えがたい経験を得たと感じています。更に、近年目覚ましい発展を遂げている東南アジア両国の勢いを実感できたことで、私自身ゴム製品に携わる一人として大変刺激を受け、自らの仕事観のみならず日本人としての誇りをも再確認することが出来ました。そして訪問各社の異国に進出するご苦労やその発展過程、そして現在の様々な新たな取り組みなどを現地で見聞きすることで、今現在の自分に必要なものは何か、これから取り組むべき事は何なのかと考える機会でもありました。
今回の研修で、今後の技術革新の必要性や職場環境の改善などの経営課題を前向きに捉え、モチベーション新たにするとても良い機会をいただきました。この場を借りまして、当会運営に関わる皆様、組合員の皆様には厚く御礼を申し上げます。